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化学的性質

レンズの加工工程中や保存中に生じる、白ヤケ、青ヤケ、潜傷などの表面劣化は、ガラスの化学的耐久性が乏しい場合に、ガラス成分と、水あるいは洗剤成分が化学反応を起こすために発生します。

●白ヤケ
ガラス表面に水滴が付着したり、温度、湿度の急激な変化によって空気中の水分が、ガラス表面に露結した場合に、ガラス中の可溶性成分と水が反応し、ガラス表面が侵食されて荒らされたり、水の蒸発後の溶出成分や溶出成分と空気中のガス(たとえばCO2)との反応生成物が析出して、表面が白く曇って見えることがあります。この現象が白ヤケです。

図2

図2

白ヤケ発生の難易度は、粉末法耐水性*(DW)により評価できます。

●青ヤケ
研磨された光学ガラスの表面が水分、酸などによって侵されて表面に干渉色の反射光が見えるようになることがあります。この現象が青ヤケです。
ガラスが水や酸と接触すると、化学反応(ガラス中の陽イオンと水中のヒドロニウムイオンとのイオン交換反応)を起こし、表面に母体ガラスよりも屈折率の低い薄層が生じて、干渉色を呈するようになるからです。

図3

図3

青ヤケ発生の難易度は、粉末法耐酸性*(DA)や表面法耐青ヤケ値(TBlue)により評価できます。

●潜傷
研磨工程でガラス表面に生じた微少傷が、洗浄工程で、特に洗剤溶液中に含まれている無機ビルダ-によって表面が侵食を受け、肉眼でも見える程度にまで成長することがあります。この現象が潜傷です。

図4

図4

無機ビルダ-溶液中での侵食には,Na2CO3などのビルダ-が加水分解して水酸イオンを生じ、これがガラスを侵食する場合と、重合リン酸塩ビルダ-のように加水分解した重合リン酸イオンがガラスを侵食する場合があります。前者における侵食のし易さは耐潜傷性(DNaOH)により、後者における侵食のし易さは耐潜傷性(DSTPP)により評価できます。

1. 粉末法耐水性*(DW)

比重に相当する質量の粉末ガラス(粒度425~600μm)を白金かごに入れ、それを純水(pH=6.5~7.5)80mlの入った石英ガラス製丸底フラスコ内に浸漬し、沸騰水浴中で60分間処理し、その減量率(%)によって表5の級に分類してあります。

表5 粉末法耐水性(DW)の級

質量減(%)
1 <0.05
2 ≧0.05〜<0.10
3 ≧0.10〜<0.25
4 ≧0.25〜<0.60
5 ≧0.60〜<1.10
6 ≧1.10

 

2. 粉末法耐酸性*(DA)

DWの測定方法と同様に、フラスコ内に0.01mol / l硝酸水溶液を入れて処理し、その減量率(%)によって表6の級に分類してあります。

表6 粉末法耐水性(DA)の級

質量減(%)
1 <0.20
2 ≧0.20〜< 0.35
3 ≧0.35〜< 0.65
4 ≧0.65〜< 1.20
5 ≧1.20〜< 2.20
6 ≧2.20

 

3. 表面法耐青ヤケ値(TBlue

直径43.7mm(両面で30cm2)、厚さ約5mmの対面研磨されたガラス試料を、毎分1lの速度でイオン交換樹脂層を通って循環され、50℃、pH = 7.0±0.2に保たれて、よく攪拌されている純水中に浸漬し、そこで生じる青ヤケ層の干渉色を100Wのタングステンランプ光のもとで一定時間毎に目視により観察し、青色(n・d = 約120~130nm)の青ヤケ層の生成が認められるか否かによって表7の級に分類してあります。
注:nは青ヤケ層の屈折率、dは青ヤケ層の厚さ

表7 表面法青ヤケ値(TBlue)の級

TBlue
hours
1 >45
2 45
3 25
4 10
5 5
注参照 Note

注)ガラス表面全体が溶出するために青ヤケ層が観察されない硝種または干渉色の変化が不規則な硝種。

4. 耐潜傷性(DNaOH

直径43.7mm(両面で30cm2)、厚さ約5mmの対面研磨されたガラス試料を、よく攪拌されている50℃、0.01mol / l NaOH水溶液中に、15時間浸漬したときの単位面積当たりの質量減〔mg / (cm2・15h)〕によって表8の級に分類してあります。

表8 耐潜傷性(DNaOH)の級

質量減〔mg / (cm2・15h)〕
1 <0.02
2 ≧0.02〜< 0.10
3 ≧0.10〜< 0.20
4 ≧0.20〜< 0.30
5 ≧0.30

 

5. 耐潜傷性(DSTPP

直径43.7mm(両面で30cm2)、厚さ約5mmの対面研磨されたガラス試料を、よく攪拌されている50℃、0.01mol / l Na5P3O10(STPP)水溶液中に、1時間浸漬したときの単位面積当たりの質量減〔mg / (cm2・h)〕によって表9の級に分類してあります。

表9 耐潜傷性(DSTPP)の級

質量減〔mg / (cm2・h)〕
1 <0.02
2 ≧0.02〜< 0.20
3 ≧0.20〜< 0.40
4 ≧0.40〜< 0.60
5 ≧0.60

 

6. 水に対する真の化学的耐久性(D0)

水中のガラス表面においては、可溶性イオンの選択的溶出反応とガラス骨格(SiO2、B2O3)の加水分解による表面全体の溶解反応が同時に起きると考えられます。この(溶出+溶解)反応のし易さは、ガラスの水に対する本質的な強さを示すものといえます。

反応のし易さは水に対する真の化学的耐久性(D0)により評価できます。

表面法耐青ヤケ性(TBlue)と同一条件下で所定時間浸漬したときの単位時間、単位面積当たりの質量減〔10-3mg / (cm2・h)〕によって表10の級に分類してあります。

表10 水に対する真の化学的耐久性(D0)の級 

質量減〔10-3mg / (cm2・h)〕
1 < 0.4
2 ≧0.4〜< 5.0
3 ≧5.0〜< 10.0
4 ≧10.0〜< 15.0
5 ≧15.0

 

7. 耐候性*(DH)

30×30×3mmの対面研磨されたガラス試料を、日本光学硝子工業会規格JOGIS07-2009で規定された高温高湿度の温度サイクル環境化で48時間処理後のヘイズ(%)(散乱光/入射光)によって表11の級に分類してあります。

表11 耐候性(DH)の級 

ヘイズ(%)
0 < 0.3
1 ≧0.3〜< 3
2 ≧3〜< 10
3 ≧10〜< 30
4 ≧30
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