1.転移点*(Tg)
ガラスが“ガラス状態”(低温側)から“過冷却液体状態”(高温側)に転移する温度を転移点(Tg)といいます。
炉内温度分布が±1℃の示差熱膨張計を用い、十分にアニールされた試料を毎分4℃の一定速度で加熱したときに得られる温度と試料の伸びの関係を示す熱膨張曲線(図5)において、高温側と低温側との直線部分を延長した交点に対応する温度を転移点としてあります。
当社では高温側の直線は傾き(微分値)が最大となる温度で、また低温側の直線はTgより150℃低い温度で求めています。転移点の単位は℃で表示しています。
この温度は、約1013〜1014dPa・sの粘度に相当する温度とみなされており、アニールを行う際の保持温度の目安となります。
注 1dPa・s = 1poise
図5 熱膨張曲線
2.屈伏点(Ts)
熱膨張曲線において、見掛け上、膨張が停止する**温度を屈伏点(Ts) として表示してあります。約1010〜1011dPa・sの粘度に相当する温度とみなされています。
** この現象は、ガラスの本質的な熱膨張特性を示すものではなく、ガラス試料に加わる荷重とガラス試料の自重とによる変形で生じたものです。
3.平均線膨張係数*(α)
常温域(-30℃~70℃)と高温域(100℃~300℃)の平均線膨張係数をそれぞれαn,αhの記号で10-7 / Kの単位で表示してあります。常温域は干渉膨張計を用い、高温域は示差熱膨張計を用いて測定してあります。
平均線膨張係数αn,αhは次式により求めてあります。
ここで、dTnは-30~70℃の温度差(K)、Lは試料の初期長さ(mm)、dLnは-30~70℃の温度範囲における試料長さの変化量(mm)です。
ここで、dThは100~300℃の温度差(K)、Lは試料の初期長さ(mm)、dLhは100~300℃の温度範囲における試料長さの変化量(mm)です。
4.ひずみ点(T1014.5)
ガラスの内部応力が数時間で消失する温度で、約1014.5dPa・sの粘度に相当する温度とみなされています。JIS R3103-02:2001に規定される方法により測定し、ひずみ点を求めてあります。
5.徐冷点(T1013)
ガラスの内部応力が数分で消失する温度で、約1013dPa・sの粘度に相当する温度とみなされています。JIS R3103-02:2001に規定される方法により測定し、徐冷点を求めてあります。
6.軟化点(T107.6)
ガラスが自重で顕著に軟化変形しはじめる温度で、約107.6dPa・sの粘度に相当する温度**とみなされています。
注**・・・Littleton pointとも呼ばれています。
JIS R3103-1:2001に規定される方法により測定し、軟化点を求めてあります。
7.熱伝導率(λ)
熱伝導率(λ)は、熱流密度(熱流速)を温度勾配で除した商、すなわち、単位時間に単位面積を通して移動する熱量を単位距離当たりの温度差で除した商をいい、W / (m・K) の単位で表示してあります。
注:W / (m・K) = 8.6000×10-1kcal / (h・m・℃) = 2.38889×10-3cal / (s・cm・℃)
JIS R1611:2010に準ずる方法により測定し、熱伝導率を求めてあります。
8.比熱(比熱容量)(Cp)
比熱(Cp) は、熱容量を質量で除した商、すなわち、単位質量の物質の温度を1単位(1Kまたは1℃)だけ上昇させるに要する熱量をいい、kJ / (kg・K)の単位で表示してあります。
注:1kJ / (kg・K) = 2.3889×10-1cal / (g・℃)
JIS R1611:2010に準ずる方法により測定し、比熱容量を求めてあります。